ギャラリー運営する学生に聞いた、「好きなものを作り続ける」ことの意味

居酒屋の奥にある四畳半くらいの小さなスペース。ちょこっと足をふみ入れて、ご飯を食べて、ちょこっと人とつながって、いつのまにか「ちょこっと」が広がっていく。
chocottoのTwitter https://twitter.com/chocott02763275?s=06 より引用
初めまして、沖縄県立芸術大学工芸専攻の児玉夏菜です。工芸とは美的価値を備えた実用品を作ることですが、商業的・実用的なものを目指すのか、自分の作りたいものを突き詰めるのか、そのバランスをどう取るのか悩んでいました。
今回はそのヒントを探るべく、chocotto代表の福富貴弘さんにお話を伺いました。chocottoとは沖縄県立芸術大学で陶芸を学ぶ学生グループ名であり、ギャラリー名です。安里(あさと)にある居酒屋の片隅で、一般の方に向けて焼き物を中心に展示・販売していました。
※2020年10月現在、活動休止中です。
Chocottoについて
―はじめにコンセプトについて教えてください
自分たちの作品を一般の人たちに見てもらい意見を直接聞いて、制作に活かせる場所があればいいなと思いchocottoを作らせて頂きました。
―どうして居酒屋で始めたのですか?
元々自分がその居酒屋で働いていて、オーナーさんが「今使ってない部屋があるから、自分たちで片付けるなら勝手に使っていいよ。作品でも飾ったら。」とおっしゃって下さって、元々やりたかったギャラリーをやってみようと思いました。一人で使うのは勿体なかったので、何人か誘ってchocottoとして活動を始めました。
―chocottoを始めたことでの変化や、お客さんからの反響はありましたか?
自分は作品に対して意見を聞ける機会が増えました。仲の良い方たちや、本当に知らない方も来て頂いたのですが、初対面の人は基本的に作品に対して悪いことは言わないので、できれば悪い所を言ってほしいとお願いしてかなり言っていただいたので、自分的にはメリットが多くありました。また、他のメンバーも意見を聞けたと言っていました。
あと、芸大生がどんなことをやっているのか知らない人たちに少しでも沖縄県芸について知ってもらえました。その点はよかったのかなと思います。
―chocottoにはどんなお客さんが来られますか?
居酒屋に来て、そのついでに見てくださるお客さんもおられます。他にはオーナーや店長が宣伝してくれて、陶芸が好きな人たちや逆に全く興味のない人たちが見にきてくれて、その興味のない人からの意見は面白かったですね。
―例えばどんなことを言われたのですか?
「学校でこんな陶芸ができるんだ」と言われました。陶芸の作品に関しての意見がほしかったんですが、お客さんの反応を見て、芸大生がどんなことをしているのか世間に知られてないんだなと分かりました。そう考えると自分たちは本当に狭い世界しか見えてないんだなと思いました。
―「こうだったら使いやすいのに」みたいな意見はなかったですか?
ありましたが、その要望が陶器にできることではなかったです。陶器は焼く時に耐えられる形にしないといけないので。こうだったら良いのに、という意見に対しては改良ではなく、新たな作品に活かした方がいいなとは思います。
それに要望通りに形を変えちゃうと、自分の作品ではなくなってしまうので、かなり難しいですね。1つの意見として捉えるのは良いけど、意見を聞きすぎると作品がブレブレになっちゃいます。

―ギャラリーでは作品を購入することも可能でしたが、福富さんは制作する際に、純粋に作りたい物を作るのか、それともお客さんに使ってもらうことを考えながら作るのか、どんなことを考えながら制作されていますか?
自分の場合は結構極端ですね。自分が作ってて楽しいと思うものを作ります。好きな食べ物や飲み物、自分だったらコーヒーとかお酒の器をつくった方が楽しい。やっぱり好きなものなので、こだわりが出てくるんです。そのこだわりを持って器を作った方がいいものができる。
自分はあまりワインが好きじゃないんですけど、美味しく飲めて使いやすいワイングラスを作るのは多分無理なんで。お客様に対してというよりも、好きなものを当てはめて、こだわりを持って作っていくのがいいなと思って制作しています。
―これは私が普段考えていることなんですが、大学の授業では利益や販売することを考えずに作品を作りますよね。今後、陶芸専攻なら陶芸家になったとして、仕事になっても純粋に作りたいものを作り続けられるのか。やはりお客さんに手にとってもらえる作品を目指すのか。職人さんや工芸家のみなさんがどんな気持ちで作品と向き合っているんだろうって疑問でした。
それでいうと、一生作りたいものを作り続けた方がいいと思います。全ての工芸において、やりたくないことでもしっかりやれて、基礎が出来てるのが当然って考え方が当てはまると思います。基礎が出来ていないとまず話にならないので、基本は嫌というほどやって、それができたらやりたいことをやってればいいと思います。
もし仕事にするんだったら作りたくないものを作るのはやめて、作りたいものを作った方が絶対いいと思います。

福富さんと陶芸
―沖縄県立芸術大学に決めた理由はなんですか?
すごい聞かれるんですけど、高校生の時に就職か進学しようか迷っていて、お世話になっていた陶芸家の人たちに「しっかり外を見てこい」と言われて「外か~遠いところに行ったろ」と思って、東日本に住んでいたんで車で通えない沖縄にしました。
―日本では愛知県が陶芸で有名ですが、例えば愛知県立芸術大学に進学することは考えなかったのですか?
磁器の名産地は日本の真ん中のあたりに密集してるんですけど、勝手な想像ですが、まず東日本と西日本でろくろのやり方が違うんですよ。中国から伝わったものと朝鮮から伝わったもので回転の向きが違うんです。ちょうど真ん中の地域って技法が混ざってしまっていて、ろくろの回転方向は同じなのに土を練る方向が逆で、そうすると土がほどけてしまって扱いづらいはずなのにやってるんです。
磁器は鋳込み(型に泥を流し込んで作る方法)も多く行われているんですけど、それなら方向は関係ないのでほどけることを気にする必要がなかったのかもしれません。いずれにしろ何か理由があるとは思うんですが、そこが気になったので真ん中の地域に行くことは考えなかったですね。
※諸説あります
※土によっては練る方向やろくろの回転方向を気にする必要のないものもあるそうです
―院を卒業した後はどうされるんですか?
本来の予定ではバイトでお金を貯めてたので1回海外に行ってみようと思っていたんですが、コロナの影響で行けなくなってしまいました。日本の窯元もまわりたかったんですが、この状況なので行けていません。
陶芸家になるっていうのはずっと決めていたことなんで、あとはどこで修行をするのかってことだけですね。窯元を探したかったのですが実際に見られないので悩み中です。
―海外はどこに行かれる予定だったのですか?
自分はヨーロッパ圏、特にイギリスの食器が好きなので、とりあえずイギリスに行って、あとは現地でお勧めの地域を聞けたらいいなと思っていました。
―chocottoは現在活動休止中ですが、今後の活動予定などはありますか?
僕たちがイベントなどで忙しいのと、後輩たちは卒業制作、院に入るなら受験があるので現在は休業中です。あと居酒屋自体があと1年で移転するので、今後どうなるか分からないです。でも続けたい気持ちはあるので保留中です。
終わりに
取材を通して、福富さんの作品に対するブレない姿勢と、陶芸が好きだという気持ちが伝わってきました。そして意外と難しい「自分の好きなものを突き詰める」ことの大切さも改めて実感しました。そうして作った作品を販売して、一般の方に買ってもらうということは何よりも嬉しいことだと思います。私は作品を作るとき、つい「こうしたら教授に褒めてもらえるかな」「これはやめた方がいいと言われてしまうかな」など講評のことを気にしてしまい、他人からの評価を気にしすぎる所が自分の弱点だと思っていました。だからこそ自分の好きなものを突き詰める強さが羨ましくもありました。
今回の取材で、教授からの評価も、世間からの評価してもらう(作品を買ってもらう)ことも同じ方向を向いていたのだなという気付きがありました。そして他人からのアドバイスは怖がるものではなく、糧にするものだと思い出しました。もっと肩の力を抜いて、素直に自分が美しいと思う作品を作って、指摘して頂きながら改善していきたいです。
コロナウイルスの影響が世界中で出ていますが、海外で陶芸品を見たり、世界中を自由に行き来できる日が早く来るといいですね。沖縄には首里城、おきみゅー(沖縄県立美術館・博物館)、グスク跡地など素敵な場所がたくさんあるので、いつか遊びに来てください!

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(取材・編集・執筆/沖縄県立芸術大学デザイン工芸学科工芸専攻1年 児玉夏菜)



