コロナ×香川県立ミュージアム 〜美術館としてコロナとどう共存していくか〜
2020年、私たちの日常を変えた新型コロナウイルス。
美術業界も例外ではなく、全国の美術館やギャラリーは早急な対応に追われた。
私は今、広島県にある美術系大学の大学院で油画を学んでいる。そして、大学院修了後は画家として活動していこうと考えている。
そのためには、With/Afterコロナ状況下でも万全な安全対策を取った展示を行えるようにすることが重要である。
しかし、With/Afterコロナ状況下における展示方法やそれに関わる安全対策をどのように行ったら良いのか、まだはっきりとイメージできていない。
今回は、それらについて模索するため、香川県立ミュージアムでの新型コロナ対策について主任文化財専門員の信里芳紀さんにお話を伺った。
開館の継続を目指して
ー香川県立ミュージアムのコロナ対策について教えてください。
「香川県立ミュージアムでは、博物館として実際に展示資料を見てもらうことは重要と考えたため、『開館の継続』を目標にコロナ対策を行ってきました。ですが、感染状況が悪化した4月18日から5月8日にかけては臨時休館せざるを得ませんでした。臨時休館後のゴールデンウィーク明けは、展示のみの開館をしましたが、現在は、状況に応じて徐々に規制を緩和し、イベントや利用施設などを再開していっています。
また、開館を継続するにあたってできる安全対策は取るようにしています。イベントも徐々に再開させているのですが、定員が72名の講座を半分の36名に減らしたり、ミュージアムトークの定員を10人未満にしたりしています。かつ、そこでクラスターが起きてしまった時にすぐに対処できるようにするために、参加者の方には接触確認アプリのインストールや名簿記帳の要請をしています」
<館内で実際に行われているコロナ対策>
ー館内ではどのようなコロナ対策が取られていますか?
「チケット売り場や総合案内所ではアクリルパネルを設置したり、来館者の方が並ぶところに足のマークを貼ったりすることで飛沫感染の予防やソーシャルディスタンスの確保に努めています。また、来館者の方に対して検温の実施や、入り口や各所に消毒液の設置と『新型コロナウイルス感染防止対策のお願い』や接触確認アプリの推奨の張り紙をすることで予防に努めています」
「エレベーターは4人までしか入れないようにして、できるだけ人が密集しないように工夫しているんですよ。ここにも張り紙をして、来館者の方に予防を呼びかけています」
「このように利用できるロッカーや休憩スペースを減らすことでソーシャルディスタンスの確保をしています」
「展示室内では、タッチパネルやスタンプを中止して接触感染を減らしています。また、展示室内の椅子を離しておくことで密にならないように工夫しています」
「こちらは図書コーナーです。
いつもは1つの机につき、6席用意しているのですが、今は3席にして、かつ、対面には座らないようにしています。
あとはですね、子供たちが十二単や甲冑を着たり、昔の遊びをしたりすることができる体験学習室やビデオライブラリーの利用を休止したり、ミュージアムショップを一方通行にしたりすることで人の接触をなるべく減らす工夫をしています」
外出自粛中でもミュージアムを楽しめる取り組みを
ー香川県立ミュージアム様のホームページを拝見させて頂いたのですが、「おうちミュージアム」と称して、ネットで学べる動画をアップされていますよね。この活動に至った経緯についても教えて頂けますか?

(香川県立ミュージアムHPより)
「3月に新型コロナの状況が悪化したため、イベントを全て中止しなくてはならなくなりました。そのため、人に来てもらって資料や作品を見てもらうことができなくなるのではという懸念がありました。そこで対策を考えていると、北海道博物館の『おうちミュージアム』という取り組みが全国の博物館や美術館に広がっていることを知り、香川県立ミュージアムも参加することにしたんです。それで、ネットでも学べる動画を公開することにしました。最初はTwitterで動画を公開していたのですが、Twitter上にアップできる動画は容量制限があるため、途中からYoutubeで動画を公開することにしました。
内容は香川県の歴史や美術についての動画をアップしています。
最初は館内の資料展示の紹介をしていましたが、途中から館外にある香川県ゆかりの作家、イサム・ノグチの作品や、史跡などの紹介もするようになりました。また、ミュージアムトークの動画配信も行っています。
このおうちミュージアムについてはとても良い取り組みだと思うのでこれからも続けていこうと考えています」
ーなるほどです。コロナの状況下だからこそ見えてきたものもあるのですね。そういえば、イサム・ノグチの作品について紹介している動画の下に《オクテトラ》などの作品のペーパークラフトの型紙がありますよね。
「はい、その型紙をダウンロードして厚紙などに印刷するとイサム・ノグチの作品である《オクテトラ》などのペーパークラフトを作ることができるようになっています。香川県立ミュージアムの2階のチケットカウンターにも厚紙にコピーしたものを置いていますよ。これはかなり好評ですね」

(香川県立ミュージアムHPより)
ー自宅でペーパークラフトを作っていろんなところに置いて写真を撮ってみても楽しいかもしれませんね。私も家で作ってみようかな…。
With/Afterコロナ状況下での美術館の在り方
ーWith/Afterコロナの状況下で美術館として、これからどのように活動していこうと考えていますか?また、その上で重要だと考えていることについて教えてください。
「これは難しい質問ですね…。
開館を継続することを目標にして取り組んでいきたいと考えています。そのため、コロナの状況に応じて、感染症予防対策を適切に行っていくことになります。
これからは、Withコロナの状況下で博物館を運営していかなくてはならないため、大がかりに人を集めることが困難な時代がしばらく続くと思います。だからこそ、多くの人が来館できなくとも、資料や作品を楽しむことができるようにするためのツールの一つとして動画配信は有効と考えています。
しかし、実物を見て頂くことが本来の目的のため、動画を見るだけで満足してしまうのは…という気持ちもあります。誰もが資料や作品を手軽に見ることができるのはとても良いことであるとは思うのですが、実際に実物を見る機会を失ってほしくないのも本音です。
また、博物館・美術館の多くは事業評価を設けています。その中でも来館者数は主要な基準であるわけですが、このような状況下では、別の評価基準が必要となってくると考えています」
最後に
香川県立ミュージアムに実際に行き、館内の様子を拝見させて頂いたり、お話をお伺いしたりすることで、展示をする際にどのような対策等をとれば良いのかイメージすることができた。
来館者の方に安心して展示を見て頂けるようにするためには、消毒液の設置や人が密集しないための工夫(動線を考える、足元に印をつける等)など多くの対策を抜け目なく取る必要があると考えた。そのため、展示をする際には、コロナ対策のために準備しなければならないことを書き出したリストを作り、ひとつひとつ丁寧に実行していくようにしたい。また、コロナ対策について他の人と話したり、ネットで調べたりすることで自分では思いつかなかった方法で感染症予防ができることもあるため、自分から積極的に情報を取り入れていくよう心がけたい。
同時に、安心して展示を見ることができるようにするためには、展示を見る側の行動も重要となってくると考えた。いくら主催者側が万全な安全対策を行っていたとしても展示を見る側が他の人に配慮した責任ある行動を取らなければ意味がない。そのため、美術館やギャラリーなどで展示を見させて頂く際には、マスクの着用や手指の消毒など自分ができる範囲の安全対策はしっかりとした上で楽しむようにしたい。
最後に、With/Afterコロナ状況下でも全員が安心して楽しむことのできる展示にするためには、ひとりひとりの協力が重要になってくると考える。今こそ、私たちは他の人への思いやりの心を持って行動していくべきなのではないだろうか。
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【香川県立ミュージアム 展覧会情報】
特別展「語る武具―ARMOUR & STORIES―」
会期:10月24日(土)~12月6日(日)
時間:午前9時~午後5時 入館は閉館30分前まで
休館日 : 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日、11月23日(月)は開館)10月24日(土)、31日(土)、11月7日(土)、14(土)、21(土)、22(日)は午後7時30分まで夜間開館
料金:一般1,000円
概要:戦国時代末期から江戸時代にかけて用いられた甲冑や刀剣、馬具といった武具類は、歴史を知る貴重な遺産です。中には優れた工芸品としての魅力をもつものも多数ありますが、難しい用語や専門の知識が必要で親しみにくい印象があります。本展覧会は、見方をかえ、武具の周辺に生まれた「物語」に注目します。人が武具とともに歩んできた、作る、使う、伝えるという動きの中で、「いわく」や「いわれ」をはじめとするさまざまな「物語」が生まれてきました。武具にまつわる「物語」を見つけ出し、読み解くと、鑑賞する美術工芸品のイメージに留まらない、武具の生きた姿が明らかになってきます。
※画像:色々威牡丹金物大鎧(個人蔵)
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(取材・編集・執筆:尾道市立大学 大学院 美術研究科 美術専攻 油画コース 2年 小西 美幸)
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