2021-02-12

札幌が誇るZINEイベント「NEVER MIND THE BOOKS」に出展&レポート!(後編)

D-LAND MAGAZINEをご覧の皆さん、こんにちは! 札幌市立大学デザイン学部デザイン学科の三上です。

今回は、札幌が誇るZINEイベント「NEVER MIND THE BOOKS」をテーマに、イベントの歴史や札幌のZINEカルチャー、そしてコロナ禍での開催などについてお伺いするため、企画運営を行う菊地和広さん、小島歌織さんのお二人にインタビューさせていただきました。

前編では、2020年10月31日に開催されたNEVER MIND THE BOOKS 2020の出展&レポートを行いましたので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。

菊地 和広(バックヤード)|札幌在住。フリーのグラフィックデザイナーとして、2010年よりバックヤードの屋号で活動。広告デザインのほか、自身のグラフィック作品の展示など、活動は多岐にわたる。

小島 歌織|1982年苫小牧生まれ、札幌在住。グラフィックデザイナーとして広告やパッケージなどのデザインを手掛けながら、2011年からZINEイベント「NEVER MIND THE BOOKS」の企画運営を行う。

最初は大ゲンカ。

(写真左から順に)菊地和広さん、小島歌織さん

―どういったきっかけでNEVER MIND THE BOOKS(以下、NMTB)は始まったんでしょうか。

小島 歌織(以下、小島):もともと菊地くんが、*TOKYO ART BOOK FAIRに参加していたんだよね。

*TOKYO ART BOOK FAIR/2009年にスタートしたアート出版に特化した日本初のブックフェア。年に一度開催され、国内外の出版社やギャラリー、アーティストなどが出展し、2万人以上が来場するイベント。今年はVirtual Art Book Fairとしてオンライン上で開催された。https://2020.virtualartbookfair.com

菊地 和広(以下、菊地):15年くらい前に、3331 Arts Chiyodaでやっていた時だね。

小島:今より規模は小さかったんだけど、尖った人たちが結構出展していて。出展の競争率も今ほどは高くなかったのかな。

菊地:自分で作品を作るというのは昔からやっていたから、これはいいと思って出展者として参加しました。

小島:私も売り子として2011年のTOKYO ART BOOK FAIRに一緒に行ったらすごく楽しくて、ふたりで盛り上がったんですよ。

―TOKYO ART BOOK FAIRへの出展が、NMTB誕生のきっかけなんですね。

小島:自分たちの周りにも出展してくれそうな人たちがいるし、(こういったイベントを)札幌でもできるんじゃないかなと盛り上がって。当時は自分たちも含めてスタッフが4人くらいいて、その内のひとりは興味がある、ぐらいの感じでした。私と菊地くんと、もうひとりのスタッフはぜひやりたいなと思っていて。いざやろう!となったときに・・・ケンカしたんだよね(笑)。

―ケンカですか!?

菊地:大ゲンカ(笑)。ある日俺が急に「ひとりでイベントやるから会場も取っておいた」という感じで、全部ひとりで決めたの。

小島:イベントのタイトルも「菊地和広のネバーマインドザブックス」みたいな感じ。

―それがきっかけでケンカされたんですね。

小島:私たちは一緒にやると思っていたからね。

菊地:誰にも相談せずに人も集めて。

小島:おいっ!となりつつも、手伝ったり参加したり。

菊地:ケンカしながらね。出展者数はたぶん10組くらいだったかな。

小島:以前札幌にあったアティックというスペースで、机などを使って即席のブースを設置したり、飲食関係の友達にカレーを作ってもらったりしつつ、こじんまりと開催しました。お客さんは100人弱くらいだったかな。

菊地:でも、盛り上がったんだよね。楽しかったね、となってとりあえず終わり。言わばゼロ回目です。

小島:TOKYO ART BOOK FAIRに行ってから、開催までは2週間くらいで。

―開催まで2週間ですか!

小島:1回目はそれくらいの熱量で開催しました。

菊地:逆にそれくらいでできるよ(笑)。やるかやらないか、それだけです。それからしばらくして、LOPPISさんから声がかかって。

小島:LOPPISは北欧を中心とした雑貨店やカフェが集まる蚤の市のようなイベントなのですが、もともとLOPPISの運営の方に知り合いが何人かいて。ヨーロッパの蚤の市でも、売場のまわりでクリエイターが自ら描いた作品を販売したりする場があるみたいで。

菊地:NMTBのことを覚えていてくれて、「前に面白いことやっていたよね、LOPPIS内で開催したら?」と言ってもらいました。それが2013年かな。

小島:イベント内イベントというかたちで、はじめて正式に出展者を募集して開催しました。数は20組くらい。

菊地:このあたりから大々的にやっているんだね。ちゃんとやろうと、福岡からゲストを呼んだり。

小島:1回目は実質ゼロ回目みたいな感じだったから、出展者を募集するときも、SNSで「連絡ください」みたいな感じで集めたの。

菊地:LOPPIS内で開催した時にお客さんの数がすごかったのが大きかった。それと、ゲストを呼んだのも大きくて、要は楽しかった。

小島:壁にライブペイントをしたり、前夜祭をしたり。その後にイベントを開催したから、疲れてボロボロ(笑)。

菊地:普段のデザインの仕事は言ってしまえば受注産業でしょ。自分たちで主催してやるっていうのがすごく新鮮だった。1回目の時もやっていることは同じなんだけど、規模が大きくなると新鮮味も違うというか。大げさに言うと、普段の仕事には「自分たちで動かしている感覚」はあまりない。

小島:前乗りで入って、机のサイズを計測したり、ブースを作ったり、そういった地味な作業もね。

2013年開催当時のフライヤー。

―LOPPIS内で開催したころから「イベントを続けていこう」という意識が生まれたんでしょうか。

小島:そうですね。このあたりから出展者に「来年も参加します!」と言われるようになって。来てくれた人にもアンケートを取ったりして、こうして欲しいとか、色々聞いて。じゃあやろうかと。その時はLOPPISの方が場所や机の手配をしてくれていましたが、次やろうって思った時にはイベント内イベントでは気が済まなかったというか(笑)。自分たちでやりたいという気持ちになったんだよね。

(LOPPISのお客さんは)雑貨市のテイで来ているから、雑貨好きな方が多いんですよ。でもZINEが好きなお客さんをもっと集めたいよねっていう。ソロでやったほうがNMTBを目指して来てくれるから、もっと楽しんでもらえるんじゃないかなと。

―実際、独立してイベントをやってみて、来てくれるお客さんは変わりましたか?

小島:参加者が増えたっていうのはありました。

菊地:ありがたい話なんだけど、今年はやるのかやらないのかっていうのを周りが言ってくれるから。そもそも取っ掛かりの時点では、続けようと思ってやっていた訳じゃなかったし。

小島:楽しみにしています、という声とかもね。

2020年開催のNMTBの様子。

ZINEカルチャーと、人のつながり。

―NMTB以前は、札幌にZINEなどを販売するイベントはなかったんですか?

菊地:今は分からないけど、3年前くらいの時点では関東以北にこういうイベントはほとんどなかったんだって。もちろん、自分たちの知らないコンパクトなイベントもまだまだあるのかもしれないけれど。

小島:売り場に作り手本人が立つようなイベントはけっこう少ないかもしれない。

―作者が目の前にいて直接やりとりができるZINEのイベントは、あまり無いような気がします。

菊地:2020年はこういう状況だったから難しかったんだけど、2019年はこれまででいちばん道外の方が出展者として来てくれたんだよね。大げさではなく、約1割は他地域の人だったはず。

小島:台湾とか、九州とか・・・大阪、東京からも来てくれたね。

―出展者の方に連絡や依頼をして、ということでしょうか。

菊地:全くしていなくて。見つけてくるんだよね。

小島:台湾の人からも普通に申し込みが来て。2019年、2018年くらいからホームページに英字表記を入れたから、そのせいかも。

菊地:それだけ広がったということかもしれない。

小島:昔はZINEのイベントって言ったら、お酒(ジン)のイベントですか?と言われるくらい浸透していなくて(笑)。だから当時は仲間を求めていて、10ZINEという九州のZINEグループに連絡して、視察に行くなんてこともありました。そこで仲良くなって、来てもらって。

菊地:そうだね。

小島:あとは浜松のZING。ふたりで活動されている方達なんですけど、浜松の商店街のようなところの店舗を借りて、そこでZINEをつくったり、まちの人が「こういうのを作りたいんだけど」と言えばお手伝いをしたり、そういったワークショップを常にやっていて。

菊地:他の地域のああいった感じを見るのは新鮮だよね。

―全国の各地方にZINEカルチャーが存在している、ということですね。話は変わりますが、NMTBというイベントを続ける理由や、目的などはありますか?

小島:続けることが大切、というのをすごい指針にしていて。1回でやめちゃうことももちろんあるんですけど、続けると何かしら身になることはあるので。

菊地:今年もよっぽどやめようかと思ったけど、無理やり。最初は8月に開催を予定していたけど延期しました。キャンセルが結構多かったみたいで、たまたま会場が空いていたのがあの日(10月31日)でした。

―コロナ禍という特殊な状況でNMTBを開催されてみて、いかがでしたか?

菊地:緊張しました。

小島:責任が伴うものなので。いつも通りにやります、というわけにはいかず…。例年だと、開催前までは色々やることはあっても当日はビラ配りと入場案内をするくらいで、出展者が主役のような感じでした。今回はそういうわけにはいかないので、入場制限したりだとか、本当に運営っぽく。

菊地:今までで一番ちゃんとしていましたね。会場側から、小さいテーブルには必ずパーテーションを設置して下さいと言われていて、HACOYAさんに作っていただきました。出展者も去年の半分。窓も開放していたし、お客さんも出展者もかなり快適だったはず。出展者数は2019年がマックスかな。

ブースには大小ふたつのサイズがあり、小さいサイズのブースにはイベントオリジナルのパーテーションが設置されていた。

―僕は今回が初出展だったのですが、めちゃくちゃ楽しかったです。

菊地:お客さんとして来るより、出展した方が6倍くらい面白いと思います。他のブースに人がいっぱいいたりすると、何とも言えない気分になったりするんだよね。ああいうのが良い。

札幌ZINEカルチャーの変化。

―これまでNMTBを開催されてきた中で、札幌のZINEカルチャーの変化を感じることはありましたか?

菊地:どうなんだろう…カルチャーと言うのはおこがましいけど、定着してきたっていうのはあると思います。

小島:最初のころはZINEについてだったり、解釈について聞かれたりというのは結構あったんだけど、瞬発的にZINEという概念の意味が分かるようになってきているのかな。

菊地:某専門学校の学生さんとかも出展していたんだけど、めちゃくちゃクオリティが高いのね。こういうことをやれば良いんだなというのを分かっているというか。自分の若い頃にはその感覚がなかったから、すごく早いなと思って。それを見るのはすごく刺激的で。

小島:はじめた当初は、海外のZINEを仕入れて売るような人はあまりいなかったんだけど、今はいる。自分の目利きでZINEを選んで売っている人が現れているのは、買う人がいるから。手探りでやっていたころよりも、だいぶ仕入れや、ものを売る方法論ができあがってきているのかなと。

菊地:成熟してきている感じはある。

小島:売り方や発表の仕方もだんだんアレンジされてきていて。

―来るお客さんも、ZINEについての理解が深まってきているんでしょうか。

小島:来るお客さんに関しては全然わからない・・・(笑)。以前と比べると増えたと思います。

菊地:でもやっぱり、「今年もやるのかな」という人がいたり、「来年は出したい」という人がいたりするのはありがたいですね。

―実は昨年NMTBのボランティアスタッフをやらせていただいたのですが、今年は出展することができて光栄でした。

菊地:「何かを作りたい」という気持ちになった、という声は嬉しいですね。

小島:やりたいという気持ちが発生する一番はじめの瞬間に、自分のやっているイベントが関わった、というのはやりがいのひとつです。

菊地:たとえば普段は音楽をやっている人が、NMTBに来て「自分でも作れるかも」となるのもいい。自分自身が作り手だから余計そう思うけど、こういうのって大事だよね。

小島:そもそもZINE自体、作るハードルが結構低くて、本人のやる気さえあればできるものだから。いろんな人が来ていろんな人が発表しているっていうちょっとカオスな状態が、やっていて楽しい部分というか。今までずっと自分の中であっためていた人とかが急に出て来て、自分の作品がわっと売れて…それで「売り切れました!」なんて声を聞くと、良かった、ってなります。

2020年開催のNMTBの様子。

大事なのは続けること。

―これからのNMTBの展望はありますか?

菊地:無いんだよなあ…「続けること」でしょうか。

小島:2020年はけっこう、他のブックフェアはバーチャルでやったりしているみたいで。

菊地:こういうイベントでは本当にコミュニケーションが大事だなって思う。ネット上で売り買いするのと、会場で揉みくちゃにされて何となく買ってしまうというのでは、明らかに違う。イベントごとに関しては後者がすごい大事というか。顔が見えたり、お話ができたり。こういう人がつくっているんだ、とか。

小島:バーチャルにも色々なやり方があるからね。NMTBは対面販売がウリなので、今の所は会場に来てもらうという形式でしか考えていないけど、良い方法があれば別にバーチャルでも。

菊地:面白ければ何でもいいっていうのはあるからね。例えば50年後もNMTBが続いていたとして、その時に「果物を売るイベント」になっていてもいいんです。面白ければ何でもいいんだよなって。

―こうじゃなきゃいけない!というこだわりは無く、続けることでイベントが変化していくのを受け入れているというか。

菊地:こだわりがない方が続けられると思います。

小島:こだわりがありすぎると、望んでいる感じとマッチしていかなくなるかもしれないので。

菊地:コンセプトを決めるのも良いんだけど、まあまあまあ…みたいな(笑)。もっと普通でいいというか。これだけNMTBを好きだって言ってくれている人がいるから、これからは人に委ねようかなと。

小島:いつも色々な人が手伝ってくれているんですよ。

菊地:今回は特にそうだったね。例年だと、みんなが「この人はどう?」とゲストを紹介してくれたり。

―出会いで言うと、毎年制作されているフライヤーや、メインビジュアルを担当されている方々も素敵です。

小島:今回のフライヤーのアートワークを担当していただいたKIMURA MAIさんは、私がインスタで見つけて。誰に頼むか、というのにはこだわっています。同じテイストじゃなきゃいけない、というのは決めずに。

昨年のイベントフライヤー。全部で6種類制作された。

菊地:何となく今まではグラフィック、イラスト、グラフィック、イラスト、という流れだったから、写真は良いなと思って。

小島:もともとMAIさんはPROVOで展示をやっていて、そこで彼女を知りました。彼女の仲間たちも以前NMTBに出展していて、そのひとたちが個性的で前から気になっていて。ZINEを購入したり、作品をチェックしたりしていたんです。

菊地:最初は4人のスタッフでフライヤーをつくる担当を回して、それ以降は人に依頼するようになりました。フライヤーは、すごく大事だなと思う反面、何でもアリな部分もあって。「これはちょっと今回は…」というのは一切ないです。

小島:トーンとかも考えていないし。だから、写真があってイラストがあってと。

―統一感やつながりを生み出さないのが、逆にZINEイベントらしさにつながっている感じがします。

小島:あまりそこを意識しない、というか。トーンアンドマナーや、ブランディングというのとは真逆だと思う。

菊地:フライヤーのテイをしているけど、何かを伝えるというよりは、自分たちの士気を高めるために作っているというか。NMTBの場合はだけど。

歴代のフライヤー。

―最後に、全国の美大生に向けて何かメッセージがあればお聞きしたいです。

小島:それこそイベントをやる、となると構えてしまう学生さんもいらっしゃると思いますが、この話を聞くと「こんな感じでやってもいいんだ」と感じてくれるんじゃないかな。

菊地:最初ってやっぱりケンカするんだとか(笑)。

小島:そうそう(笑)。

菊地:今はこういう状況だけど、いろいろと作って発表することは作り手だったらみんな好きなことだろうから、機会があれば参加してほしいです。

小島:参加してみて、良かったり悪かったりするけど、それがまたその後につながるというか。成功している人も、その前には試行錯誤があって形になっていたりするので。最初にこけても、めげない、っていう。続けることが大切。

菊地:作って、人に見せびらかす。

小島:やっぱり10組でやっていたイベントが、10年続けるとあれくらいの規模になるっていうのは、結構面白いものだな、と思います。

インタビューを終えて。

ケンカしつつもきっかけから2週間で開催されたゼロ回目のエピソードや、日本全国に存在するZINEカルチャーのお話、そしてあえてこだわりを持たないスタイルなど、イチNMTBファンである筆者はインタビュー中ワクワクが止まりませんでした。

特に印象的だったのは、「続けること」という言葉。コロナ禍においても無事開催された今回のNMTBを通し、より一層「続けること」の大切さを感じました。北海道内だけでなく、国内、さらには海外からも出展者が集まるこのイベント。本記事をきっかけに興味を持っていただければ嬉しいです。菊地さん、小島さん、ありがとうございました!

HP:http://nevermindthebooks.com/
Instagram:https://www.instagram.com/nmtb_sapporo/

文・写真/三上隼人(札幌市立大学デザイン学部デザイン学科)

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